『迷い仔 -僕と“ソレ”-』

高い天井がどこまでも続く
ここは一体どこなんだろう?
外はどうやら土砂降りの様子

雨足は強くなる一方で
このままでは世界が溺れそう
僕には止める術も力もない
何よりここから出られない

悲しい色で統一された壁
扉一つないこの密室の中で
僕に出来る事は何だろう?
どんな悪足掻きを思い出すだろう…

気が付くとそこに”ソレ”は居た
ここは一体どこなんだ?
僕は考えるより早く“ソレ”に聞いた

此処ハ貴方ノ“想イ出ノ中”
此ノ侭デハ貴方ハ“迷イ仔”ト成ル
早ク早ク此ノ場所カラ“還リナサイ”
貴方ガ居ルベキハ“此処”デハナイノヨ

消えてしまいそうな僕とは違って
“ソレ”ははっきりとそこに存在して
綺麗な女の子の声で囁いた
僕が居るべきは“ここ”ではないと

助けに来てくれた訳じゃないけど
“ソレ”は僕に何かヒントをくれた
黒の封筒に白紙の便箋があった

ふと遠くの方から歌が聞こえた
知らないけど何故か懐かしく感じる

いつの間にか“ソレ”の姿は消えていた
遥か上方に鉄格子の窓に月を見た

僕は知らない歌を自然に口ずさむ
身体が浮き上がり窓の月へ近付く

静かに開いた窓の外は雨が止んで
美しい三日月がぽつんとそこにあった
僕の心はこんな風に独りぼっちだろうか?
→貴方ハ独リデハナイノヨ…←

“ソレ”の声が聞こえた気がした
優しいその響きに心を委ね
僕は新しい眠りに就く事にした

その眠りの中で見た夢に
あの歌を歌う“ソレ”がいた
“ソレ”は僕の大好きな……(君だった)



☆コメント☆
制作日2007年6月29日
制作時間約数時間
イメージ図は別紙にて。

※上記コメントは、制作当時のものを原文のまま掲載しています。