『小さな蜘蛛』

糸を張り巡らせて 周囲を只管気にする
嫌われたくない僕は 弱くて小さい蜘蛛のよう

逃げ足ばかりが速くなって
立ち向かう心は弱くなる一方
本当は話してみたい君にも
声を掛ける事すら出来ない

歩み寄れないこの距離にもどかしさを感じる
あの日を思い出すと自分が壊れてしまいそう
必死に守った彼女は全てを嫌になってしまったから
あの傷を癒せるはずの僕は未だ燻ったまま

糸を飛ばし続けて 周囲を気にするあまり
疲れ果ててしまった 僕は小さく脆い蜘蛛のよう

命を懸けて守った人は
僕を悪の根源だと思ってる
本当は愛していたい君なのに
僕は憎まれ怨まれ続けてる…

こんな毎日が続いてこの想いにピリオドを打った
僕はこの町を離れ独り海へと歩き始めた
世界は冬へと模様替えを始め雪が降っている
あの傷はもう癒せないままに僕は悲しみを抱えて

大好きな君を想いながら僕は涙を流していた
静かな海が目の前で僕を呼び込んでいる
こんな時ばかり足は遅く怖気付いてしまって
この想いはもう思い出せないままで僕は歩く

冷たい海が包む 僕の体も心も全て
眠くなってきたから 早く早く眠ってしまおう



☆コメント☆
制作日2008年5月25日
制作時間約30分
ぬこよりお題「蜘蛛」。
ある事件により、恋人が襲われてしまったが何とか守ろうとした彼。
命を懸けて守ったのに、彼女がある勘違いをしてしまいその結果
周囲の全ての人も含め、彼は悪の根源とされてしまった。
愛し続けていたい彼女に憎まれ怨まれ続けてしまう毎日に限界を感じ
彼はある日海を目指した。
雪が降り始める初冬の頃、海は静かで穏やかそのものだった。
普段は何事でも逃げ足が速いのに、こういう時だけ怖気付いて…
徐々に包まれていく心と体。
やっと眠りにつけそうな彼…早く早く眠りたいと願う心。
海は悲しみに染まっていった。

※上記コメントは、制作当時のものを原文のまま掲載しています。