『幻惑の灯火』

右を見ても左を見ても どこまでも続く暗い森
冷たい空気が肌を撫で 薄気味悪さが増していく

遠くに明りが見えてきた 幻灯ではなく現灯だった
それは一つの集落で 疑いつつも歓迎を受けた

夜分に訪う妖しい肢体
「手厚い持て成し致しましょう」
影無し首に刃を中てて
「その気で相手をしてやろう」

窓辺を零れる幻想月光 今宵は美麗な満月の宴
醜悪ながらも知識の魔物 流麗にして気焔の人間
永き夜宴の始まり始まり…

前を向いても後ろを向いても どこまでも来る追っ手の気配
獲物狩りの凶爪を避け 命の鼓動を確かめる

まだまだ夜闇の帳の中で 張り詰める空気に包まれて
終わらない夜の輝きに 振り翳す剣が照らされる

詰め寄る魔物の怪しい姿態
「生きては還さん人の子よ」
届かぬ胸に刃を向けて
「私は生きて帰ってみせる」

閃光瞬く幻想剣舞 今宵は死華が乱れ咲く
青紫の血汐が飛び交い 赤い血潮は滴り落ちる
永き夜宴はまだまだ終わらない…

魔物が唱う儀式の法は彼らを一つに集約させる
歴然とした力量の差が立ちはだかったその刹那――

煌めく剣轟輝く魔光 今宵の宴も終幕が寄る
失くしていない命の灯火 共に燃やして生き抜こう
離れ去り行く幻妖森海 朝陽は生花を咲き香らせて
再び手にした温もりを 離さぬように強く握り締める
永き夜宴は終わりを告げた…

右を見ても左を見ても 前を向いても後ろを向いても
どこまでも続く暗い森 そこに幻惑の灯火があるという


☆コメント☆
制作日:2009年11月4日
製作時間:約2時間
お題:幻惑の村@ぬこ 原作より

※上記コメントは、制作当時のものを原文のまま掲載しています。